2016/06/17

中華圏のアイリッシュ/

また台北に来ています。
台湾にアイリッシュを根付かせようと毎年通うようになって、もう6、7年になります。

台北では僕の生徒の林さんが台灣愛爾蘭音樂推廣中心- Taiwan Irish Music Centre - Facebook
と名付けて楽器店を営業して、レッスンや楽器の販売をしています。

何年経っても彼が孤軍奮闘しているような状況で、他に愛好家もなかなか現れないし、生徒さんも続かなかったり、彼が結成していたギターとパーカッションとのバンドも解散してしまう有様。僕はいつかは台北でアイリッシュ・セッションを!と思っているのですが、まだ道のりは遠そう。

それでも林さんは今週からフィドルの周さんとアイルランドに行ってLimerickのBlasサマースクールに参加するので、めげずに頑張っている彼をこれからも応援していきます。

台湾といえば、BBCで紹介された、台北のアイリッシュ・ダンス教室がなかなか成功している模様だけど、日本のように音楽家とのつながりはないです。ちょっと不思議でもある。


 

台湾はオカリナ愛好家が多く、クラシックをはじめとして音楽教育が盛んなので、アイリッシュが広まる可能性はあると思っていたのですが、オカリナが人気なのは、日本のアニメの曲やポップスを吹いて楽しめるからなんです。

アイリッシュはというと、一般の人が聴く機会がないのと、中国語での教材がないために、いまいち認知度が低いです。

そうそう教材といえば、僕の小さなティンホイッスルのテキストの中国語版を作ったのはちょっとずつ売れているようなので(日本では無料)、興味を持っている人は増えてきている。それでも、日本人のようにアイルランド文化を学びたいというよりは、簡単で安くてすぐに学べる便利さのためで、中華圏の音楽や民謡を吹く人の需要が結構あるみたい。

北京にも毎年のように通っています。

中国では、日本とも台湾ともまったく違う状況になっていて、これはまた面白い。

中国のアイリッシュ・シーンで面白いのは、その偏り方や受け止められ方です。おそらく手に入る情報や資料が少ないからだと思うのですが、FlookとかLunasaとか、世界中で人気がある流行のアイリッシュ音楽は好きでも、日本のアイルランド音楽愛好家のように、カウンティ・クレアの田舎の音楽家が好き、という人はいない。

そして、極端に笛吹き、つまりホイッスルとフルートが多い。漢民族って本来、笛がとても好きな民族なんだと思う。笛子や巴烏といった中国の各種民族笛と運指がまったく一緒なので、アイリッシュの笛はとっつきやすい。

そんなわけで20〜30代の若い男性を中心にホイッスルやフルートを吹く人は多いのですが、こちらも、やはりアイルランドの文化には遠く、流行のバンドのコピー(しかも完成度が高い)に終わっているのはもったいない。

北京にはフィドルやフルートやギターの入ったアマチュアのバンドもあって、去年一緒にライブをしたときには若いお客さんがたくさんはいっていましたが、オリジナリティが足りないのがやや残念です。

セッションには思いも至らず、みんなでカラオケ大会のごとく、一人づつお得意の曲をソロで吹いて見せ合うという感じです。ちょっと可愛くもあります。
僕がアイリッシュをはじめたての頃、憧れる気持ちが強くて、彼らのようにコピーしまくっていましたので、なんだか新鮮な気持ちを思い出します。

雲南省の友人のフルートの演奏動画


中国は広く、アイリッシュ愛好家は少ないので、みんな仲が良いです。日本でいうLINEのようなWeChatのチャットグループでは毎日、音楽と関係ないアニメや食べ物の話で盛り上がっているし、時々ビデオチャットで曲を披露しあっています。そういうところは、日本にはなくて、純粋に良いなあ、と思います。

台湾も中国も、これからアイリッシュ人気に火がつくとは思えないし、日本のようにアイルランドで勉強したりする本格的な演奏家も育ちそうにはないですが、ちょっとでも彼らの刺激になれば、情報が伝わればと思って、交流を続けています。

アイリッシュを通して、アジアの若い世代とその社会を覗いています。
音楽をしていて、よかったなあと思うことのひとつです。